東のエデンのなにがすごいのか 解説と感想

アニメ「東のエデン」をそっくり見返す機会があった。
とことんウィスキーを飲みながら「東のエデン」を見続けるという課題を強いられて、結局なんやかや、楽しんでしまった。その感想を、例によってダラダラと書いていこう。

神山健冶監督の作品であり、テレビ連載ということで毎週を楽しみにして過ごした人も多いだろう。
見終わった後の私的な感想としては素晴らしいところも多いが「大変惜しい」というところも多かった。

まず、冒頭に滝沢が”全裸”で出てくる場面があり、とてもコミカルだ。だが、通して見てみるとこれがなんだったのかと不可解なものに見えてきてしまう。
結局、彼のキャラクターを印象づけることにしかストーリーに関与しなかった。ターミネーターのオマージュかどうかはわからないが、全裸で出てきた彼の登場に、物語のラストかはたまたどこかで「裸」に対する決着を何でもいいからつけてほしかった。ただのコメディリリーフにしては、登場にインパクトをつけすぎだ。あるいはそこを収拾してくれれば、すごくいい方に向かったんじゃないだろうか。警察に捕まりたかった、裸のニートたちと関連付けする、というだけでは、物語として不可解すぎる。
また、なぜ森見はコインをホワイトハウスに投げたのか、そのコイン投げの意味があるなら、ラストと絡んでほしかった。意味があったり、オマージュなんだとしても、ストーリーに関わらなければ無意味になってしまう。
※無知を承知ですみませんが、ホワイトハウスにコインを投げると、なんかいいこととかあるんですか?そういう風習とかあったら教えてください。コメントに書き込み可です。
http://digitalmaiden.blog81.fc2.com/blog-entry-139.html←このページで解説されているように、物語がアメリカから始まるのは日本が東であることからのようだ。コイン投げはリンカーンにまつわることからのようだ。だが、なんなのかは判然としていない。

とはいえ、ニートたちが協力しあって世を救うという主眼はとても冴えている。
ニートというのは別に無能というわけではなく、単に仕事にありつけない人たちの呼び名であって、学生でもなく職業訓練もしていない人を指して使う言葉だ(Not in Education, Employment or Training, NEET)。そこから転じて引きこもりも社会不適合者もなんでもかんでもひっくるめられているのが今あるニートという単語の姿だ。「引きこもり」は「ニート」というよりも、対社会恐怖症とか高機能自閉症とかそういう位置付けだろう。本来の「ニート」なんて、昔で言えばモラトリアムとか、ルンペンとか言われたようなことと同じで、いつの時代にもある青春漂流な時期を過ごす青年たちのことだ。ニートなんて珍らしくもなんともない。あの空海(真言宗のお坊さんね。弘法大師ともいう)でさえ四国の山に10年引きこもった。

ついでに言わせてもらえば、「社会不適合者」は「オタク」と言われるようなジャンルと密接に関係する印象があるが、それは勝手な想像であって、実のところは関係ないか、もっと複雑で別物なはずだ。

印象ではあるが、たしかに漫画オタクの描く絵(同人誌とかね)の中には幼児性や幼児への回帰的なものが透けて見える。彼ら自身にある幼児レベルと同等もしくは低い異性とでなければ、恋愛や性を交わすことができないと信じているかのようだ。そんなもの見たことも聞いたこともない人はコミケ(コミックマーケット)の会場に行けばわかると思う。もし一人だけであんな幼児性の強いエロ漫画や幼児性の強い想像で恋愛を描いていたら、間違いなく異常に見えるだろう。だがああも人数が多いと、異常ではなく見えてくるのだ。だが会場を去ればまた彼らも一人になり、引きこもりへと帰っていく。たしかに引きこもると「ニート」な感じがするが、「ニート」はもっと多様で、もっと困っている。ニートのなにが悪い? と開き直ってみたりするやつもいるだろう。開き直りも含めて彼らニートたちなりに努力している。哀れだ。だがオタクは違い、引きこもるとしてもその現状を楽しんでいるようにも見える。そして彼らは不適合や引きこもり自体に困っていない。そこが大きく違う。

社会に出れなかろうが引きこもろうが幼児性があろうが、イコール「無能」ということではない。そりゃあ「無能」もわんさかいるだろうが中には「有能」もいる。その割合は一般社会とそれほど変わらないはずだ。
オタクはアニメや漫画だけではないし、分類はもう出来ないくらい広範囲に扱われているから、こんな話じゃ語れないのだけれど、とにかく一般的に扱われる「ニート」と「オタク」と「社会不適合者」とか、そんなものたちはひとくくりにされてしまっているようで、歯痒いものがあるのは私だけじゃないはずだ。 次のページへ→

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