映画サマーウォーズ 小磯健二「よろしくお願いしまーーーーす」の意味

サマーウォーズで小磯健二が「よろしくお願いしまーーーーーす」と言った意味が巷ではさまざまに解説されているようだ。
↓このページでもなかなかいい解説がなされている。
サマーウォーズで小磯健二がよろしくお願いしますと言った意味や理由を考察! | 芸能便り

私見ではもうちょっと違うニュアンスがあると思うのでメモしてみたい。

「よろしくお願いしまーーーーーす」の台詞が出てくるのは、ラストのピーク、最後の計算が終わったときにエンターキーを押す直前の掛け声である。

小磯健二は全体に敬語口調なので、ここで「やってやるぜーーー」とか「バルス」とか「やっちゃえ日産ーーーー」とか、そういう荒い掛け声にはならないのは当然と言えば当然だろう。

では敬語だったら他に「すみまっせーーーーん」とか「さようなっらーーーーー」とか「おねがいしまーーーーーす」とか言うんだろうかな。
「おねがいしまーーーーーす」だけならばこんなにも悩まずに済んだ。「神様、お願いします」という意味でほぼ通るからだ。
問題は「よろしく」がなににかけて、言ったのかだ。

「よろしく」の対象が「なつきへのプロポーズ」とか「なつきの家族への挨拶」とか「死んだばあさんへの返答」とか出ていて大変面白いのだが、場面には合わない。

死ぬか生きるか、あるいはほぼ死ぬ、という場面にプロポーズとか他人の家族へ挨拶とか、そういう気持ちを込めるのは利己的すぎる。
小磯健二は利己的な人間ではなく、利他的に行動する。そして数学の才能を持っていながら、案外バクチを信じてみたりする情緒も持ち合わせているタイプだ。

そういう人間がおこがましくも人の命がかかっているときにプロポーズはしない。

私はやっぱり「神様」だと思う。ただ、中東や西洋的な神(God)の信仰としての神とは違う。彼らの神は願いはかなえない。救いをもたらすことはいつかあるかもしれないが、試練を与えるのが神の役目だからだ。

小磯健二が描くであろう「神様」というのは日本的な神様で間違いないはずだ。
どこにでも八百万の神が宿っていて、我々日本人は、心のどこかであらゆる物質や現象にさえ生命を感じている。
それは日本の長い歴史の中で養われてきたアニミズム(自然界のそれぞれのものに固有の霊が宿るという信仰。)が我々を支配しているからだ。
なにかしらの特殊な能力を持つものやこと全てが神様のような霊的な存在として考えられるように、先祖たちはDNAに刻んできたのだ。

「便所の神様」もいれば、家の部屋の隅にも「かどっこの神様」が宿っている気がするし、優れたミュージシャン、パソコンにだって、スマフォひとつひとつにだって神か疫病神か死神が宿っているとさえ考えるのも、あまり無理に感じない。東北大震災のときに「天罰」と言った右翼政治家もバリバリのアニミズムだ。

小磯健二もまた日本人らしく、どこかになにかの神様を信じて、「よろしく」とお願いしたんだろう。
ではどんな神様か。

まあ、「どれにしようかな、天の神様の言うとおり」というときのように、天のどこかにいる神様だったかもしれないが、それでは面白くないので、私なりに答えを出してみた。

Wikipediaから引用。

ジョン、ヨーコ: OZの守り主で、OZ世界底辺近くをゆっくりと周回する青と赤の2頭の巨大なクジラ。

このシーン直前に出てきている神様と言えば「OZの守り主」である二匹のクジラ、ジョン、ヨーコだろう。吉祥のレアアイテムを与えてくれたときに、みんな手を合わせて「ありがたや~」と言われるクジラのことだ。覚えているだろうか。

私は飛躍して、このクジラに対して「よろしくお願いしまーーーーーす」と言ったのだと思っている。あるいはクジラを通して、奇跡を何度か既に与えてくれたどこかの神様にお願いしているのだ。

クジラは名前からして平和と愛の象徴である。世界中の人々が、なつきにアバターを渡すところなんか「power to the peaple」を髣髴させる。ちなみに「power to the peaple」も「人々に力を」という意味だとすれば「誰に力を求めているのか」という疑問も浮かばなかっただろうか。
もちろん神様あるいは強い力をもつなにかに願っているのだろう。しかしジョンはオノ・ヨーコから日本のアニミズムを受けていただろうから、もっと日本的な神に力を求めていたのかもしれないなどと考え出したらより親しみやすい曲に思えてきたりした。

とにかく神様に言ったのは確かなんだが、それじゃあって思ってこじつけただけなんだけれどね。

君ならどう思う?
もしくは細田監督だったら答えを教えてくれるんじゃないかな。
細田監督にとってジョンは神様であることは間違いないだろう。
監督、コメントください。

追記:サマーウォーズで検索かけてたら見つけたホットなページがあったのでメモ。
サマーウォーズ:曜日の求め方とか2056桁の暗号とかの解説
このブログの著者は大変頭脳明晰で、サマーウォーズに出てきた暗号解読に難点があると科学的に指摘した。それに対して賞賛するものもフィクションであるとして批判するものもいたりとコメントの行き来が激しく盛り上がった。
考証に関しては自由だし、どんな捉え方をしようが問題はないので、この著者の意見を批判することは行きすぎだろう。
コメントの中にはラブマシーンのゲーム好きという部分を取り上げて解説していた「Love Machine 2010/09/29 16:49」の推理はうまいと思う。
私見としては、あの暗号自体は大して難しいものではないものにして出題をゲーム好きなラブマシーンがした、という意見に賛成だ。
小磯健二は数学オリンピックの日本代表候補にも選ばれるくらいだから、スピードだけは速いはず。難易度が下げられて、スピードが速い小磯健二が解くには丁度いい問題だった、というのが解釈としてはバランスがいい気がする。
2048桁と2056桁の違いは私にはわからないが、細田監督が「あり得ないものにして」科学考証を逃げた可能性もあるかもしれない、とも過ぎった。数学関係者に問い合わせて「桁数変えれば、フィクションだと解ってくれるんじゃないですか」「それいいですね」と頂いたような運びとかで。こんなものあくまで推理です。
でも、いろんな見方があって、それが物議を醸して、って、映画って、ほっんとに、いいものですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA